定年まで勤めず、40代・50代で転職や独立をする人は増えています。そのとき見落としやすいのが、退職金の減額と税金の特例、企業年金・iDeCoの受取時期です。年収が上がる転職でも、退職金の減少と税の増加で、最初の数年はトータルがマイナスになることがあります。辞める前の点検項目をまとめます。
支給月数が一段下がる
定年用の支給表と、自己都合・自己都合以外の中途退職表は別であることが多いです。勤続18年で辞めると、定年まであと数年の「伸びしろ」を放棄します。20年を超えると退職所得控除の単価も上がるため、税の面でも境目です。転職後の年収増が、放棄する退職金と控除の伸びを何年で回収できるかを計算してください。
早期退職優遇で割増が出る場合は、自己都合表より有利でも、定年表よりは低いことがあります。提示額を「定年まで働いた場合の想定額」と比較しないと、得した気分だけが残ります。
勤続5年以下の短期退職手当
転職を重ね、現職の勤続が5年以下で高額の退職金(または割増)を受け取る場合、短期退職手当等として、控除後300万円超に2分の1が使えません。スタートアップの株式報酬や、役員就任後の短期退任で起きやすいです。額面3,000万円でも、手取りは一般の退職金よりかなり減ることがあります。
本ツールの「短期・役員特例」をオンにして、5年以下のケースを必ず試してください。オファーレターの額面だけで家を買う計画を立てるのは危険です。
企業年金とiDeCoが60歳まで引き出せない
会社の退職一時金は退職時に出ても、企業型DCやiDeCoは原則60歳まで受け取れません。40代で辞めると、一時金の一部が何十年も先になります。生活費の穴を退職一時金だけで埋める計画は、DC残高を「今使えるお金」と誤認すると破綻します。
転職先にDCを移換するか、iDeCoに移すかで、将来の一時金の年数と調整期間も変わります。今の退職と、60歳のiDeCoが同じ年に重ならないよう、逆算しておくと後が楽です。
社会保険と住民税の空白
退職後にブランクがあると、国民健康保険と国民年金の負担が家計に乗ってきます。給与から天引きされていたものが口座残高から直接減るため、手取り感覚が変わります。加えて、前年給与に対する住民税が翌年に残ります。退職金の手取りから、少なくとも1年分の社会保険料と住民税(給与分)を分けておくと、独立1年目の失敗が減ります。
配偶者の扶養に入る予定でも、退職所得や失業給付、DCの受取で収入要件を超えることがあります。税と社保を別々に確認してください。
辞める前のチェックリスト
1) 退職金規程の該当表(自己都合/会社都合/早期優遇/定年)で額面を出す。2) 勤続年数と短期特例の有無を本ツールに入れる。3) 企業型DC・DB・iDeCoの残高と受取可能年齢を書く。4) 同年合算にならないか確認する。5) 翌年の住民税(給与分)と国保の概算を残す。6) 転職先の退職金・DCの有無をオファーに含める。
この6点を表にすると、年収アップの求人が本当に得かが判定できます。感情で辞めずに、手取りの表で辞めてください。
配偶者と共有する数字
早期退職は世帯の問題です。手取り、翌年の社会保険料、再就職までの月数、iDeCoを崩すかどうかは、一人で決めない方が安全です。本ツールの結果をPDFにして、配偶者や親に見せてください。額面の大きさだけが先に伝わる会話は、後から税の話が出たときに不信につながります。
独立する場合は、売上が立つまでの生活費を手取りから先に取り分けます。退職金を開業資金の全額にすると、事業が遅れたときに生活が止まります。守るお金と攻めるお金を、辞める前に分けてください。
まとめ
定年前の退職は、支給月数の減少、短期退職手当、60歳まで引き出せない年金資産、翌年の住民税が重なります。額面の提示だけで決めず、本ツールで手取りを出し、回収年数を見てから判断してください。企業型DCとiDeCoは原則60歳まで引き出せないので、今使えるお金と将来のお金を分けて書いてください。勤続5年以下の割増は短期退職手当に当たることがあり、2分の1が制限されます。オファーレターの額面で家を買う計画を立てず、手取りと翌年の社会保険料を残してから契約してください。