退職金は、人生でまとまった現金が入る数少ない機会です。使い道を誤ると、税金で減った手取りをさらに早い時期に使い切り、公的年金だけの生活に入ってしまいます。この記事では、手取りを確認したあとの配分順、やってはいけない使い方、iDeCoや公的年金との役割分担を説明します。
先に手取りを確定する
使い道の話は、額面ではなく手取りが決まってからにします。勤続とiDeCoの同年受取で税が乗ると、想定より100万円以上少ないことがあります。住宅の残債、子どもの進学、車の買い替えを額面で予約すると、後から削ることになり家族関係も悪化します。本ツールで税額内訳とPDFを出し、その数字を家族会議の資料にしてください。
手取りが分かったら、すぐ全額を証券口座や不動産に入れないでください。配分の順番があります。
配分の順番:守るお金から
推奨順は次の通りです。1) 生活費6〜12か月分の現金。退職後に再就職や事業が遅れる保険です。2) 翌年の住民税(給与所得分)と社会保険料の見込み。3) 高金利の負債。クレジットカードや消費者金融、金利の高いカードローンが優先です。住宅ローンは金利と団体信用生命保険を見て、完済が必ずしも最適とは限りません。4) 残った分を、安全資産と運用に分ける。
「退職金で住宅ローンをゼロにすれば安心」は半分正しく、半分危険です。完済後に現金が枯渇し、医療や介護で高い金利の借り入れに戻ることがあります。ローン金利が低く、流動性の価値が高いなら、一部残す判断もあります。
やってはいけない使い方
失敗例の典型は、勧められるがままに一時払いの保険や、仕組みが分からない投資商品にまとめて入れることです。退職金狙いの営業は、退職の前後に集中します。手数料と流動性、元本割れの条件を、その日のうちに契約しないでください。少なくとも1か月、手取りの表と商品の契約前交付書面を並べて検討します。
もう一つの失敗は、子どもの住宅資金や孫の教育費への前渡しで、自分の老後を取り崩すことです。援助するなら、自分の最低生活費(公的年金+取り崩し)を先に確保し、余剰だけにしてください。
運用に回すなら役割を分ける
退職金はiDeCoや企業型DCと違い、引き出し制限がありません。生活防衛と数年以内の支出は現金・短期債、10年以上使う予定がない分だけリスク資産、という分け方が分かりやすいです。iDeCoをまだ受け取っていないなら、受取時期の税と運用継続の両方を比較します。税の節約のために必要な生活費までロックしない、という原則はここでも同じです。
公的年金の繰下げは、実質的に「生涯の年金額を増やす運用」です。退職金を取り崩しながら繰下げする戦略は有力ですが、健康と現金残高の両方が前提です。
1枚の配分表にする
手取り額を100%として、現金30%、負債整理20%、中期の安全資産30%、長期運用20%、のように自分の%を書いてください。数字は例であり、住宅ローンの有無で変わります。重要なのは、パーセンテージを先に決め、商品を後から当てることです。商品から入ると、営業トークに配分を支配されます。
本ツールのPDFには、入力条件と税額内訳が残ります。配分表の1行目に手取りを転記し、家族と共有してください。無料・登録不要で何度でも計算し直せるので、額面が変わったら更新します。
数年後に見直す
配分は一度決めて終わりではありません。再就職した、配偶者の収入が変わった、介護が始まった、市場が大きく動いた、といったタイミングで、現金比率を見直します。退職金をリスク資産に全額入れたまま放置すると、必要なときに売ることになり、価格変動の影響をまともに受けます。
iDeCoをまだ受け取っていないなら、受取年の税も1年に1回は再計算してください。本ツールの入力はブラウザに残せるので、残高が変わったら額面を更新して比較カードを見ます。使い道の話は、いつも手取りから始める、という習慣が一番の防御です。
まとめ
退職金の使い道は、手取りの確定、生活防衛と納税資金、高金利負債、その後の運用、の順で考えると失敗が減ります。額面の大きさに引っ張られず、翌年の税金と生活費を残したうえで、残額だけを配分してください。勧められた商品から入ると配分が崩れやすいので、パーセンテージを先に決め、商品は後から当てます。一時払い保険や仕組みが分からない投資は、少なくとも1か月検討を置いてください。iDeCoをまだ受け取っていないなら、受取年の税も年1回は再計算し、手取りから使い道を組み立て直してください。