退職や転職を考えるとき、最初に気になるのが「自分の退職金はどれくらいか」です。退職金は法律で金額が決まっているわけではなく、勤務先の就業規則や退職金規程、企業年金の有無で大きく変わります。厚生労働省の就労条件総合調査では、大学卒・勤続20年・自己都合と、勤続35年前後の定年では支給額に大きな差があると報告されています。この記事では、勤続年数・企業規模・退職理由ごとの目安と、額面から手取りを見るときの注意点を整理します。
退職金の相場を見るときの3つの軸
相場を見るときは、勤続年数、学歴・職種、企業規模の3つをセットで確認します。同じ勤続20年でも、自己都合の退職金は定年や会社都合より低くなるのが一般的です。大企業では一時金に加え、確定給付企業年金や企業型DCが上乗せされることがあります。中小企業では中小企業退職金共済(中退共)だけ、というケースも少なくありません。
目安として、大学卒・自己都合・勤続20年で数百万円、定年まで勤めた場合は1,000万円超になる調査結果があります。ただしこれは平均値であり、中央値や業種差を見ると「自分の会社は平均より低い」ことも十分あり得ます。求人票や先輩の噂だけで判断せず、就業規則の退職金規程、企業年金の加入実績、自己都合の減額率を確認することが出発点です。
勤続年数別のイメージ金額
勤続年数が短いほど、自己都合では支給月数が大きく下がります。勤続5年未満では退職金が出ない規程、あるいはごく少額、という会社もあります。勤続10年で月給の数か月分、勤続20年で10〜20か月分、定年近くで20〜40か月分、といった階段状の設計がよく見られます。
たとえば月給40万円・勤続20年・定年相当の支給月数20か月なら額面800万円、勤続35年で40か月なら1,600万円です。同じ月給でも自己都合だと支給月数が半分近くになることがあります。重要なのは「額面」と「手取り」が違うことです。勤続20年なら退職所得控除は800万円なので、額面800万円なら課税所得はゼロに近く、手取りは額面とほぼ同じです。額面2,000万円なら控除を超えた部分に税金がかかります。
大企業と中小企業でなぜ差が出るのか
大企業では、退職一時金に加えて確定給付企業年金(DB)や企業型確定拠出年金(DC)を組み合わせる例が多く、合計の老後原資が大きくなりやすいです。中小企業では中退共の掛金と在職年数で決まることが多く、掛金月額5,000円〜1万円程度だと、勤続20年でも一時金は数百万円に届かないことがあります。
企業規模の差は「年収の差」だけではなく、「制度の差」です。転職先の提示年収だけを見て退職金を捨てると、生涯の手取りで数百万円単位の差になることがあります。特に勤続15年を超えてから自己都合で辞める場合、残りの勤続で伸びる支給月数を放棄することになります。転職の比較表には、想定退職金の現在価値も一行入れておくと失敗しにくいです。
額が分からないときの現実的な調べ方
金額が分からないまま手取りを心配しても、計算の精度は上がりません。まず人事・総務に「退職金の試算」を依頼できないか確認します。上場企業や労働組合がある会社では、勤続年数と基本給を入れると試算が出る社内ツールがあることもあります。中退共なら、加入状況と掛金を把握すればおおよその額を計算できます。企業型DCは、加入者サイトの資産残高がほぼ額面です。
どうしても分からない場合は、直近の月給と勤続年数から標準的な支給月数で概算し、幅を持って見ます。本ツールの額面概算は、厚生労働省の平均的な支給月数を単純化したモデルです。実際の支給額は勤務先の規定が優先されます。概算で「税金がゼロに近い帯」なのか「控除を大きく超える帯」なのかだけでも分かると、次の行動が決まります。
相場を見たあとに必ず確認する手取り
相場の数字は額面であることがほとんどです。手取りを見るには、退職所得控除、2分の1課税、所得税・復興特別所得税・住民税を順番に当てます。勤続20年・額面1,000万円なら控除800万円、課税退職所得は100万円、税額は十数万円規模、手取りは約985万円前後、というのが典型です。同じ額面でも勤続10年なら控除は400万円なので、税負担は増えます。
iDeCoや企業型DCの一時金を同じ年に受け取ると、控除が1回分しか使えず、相場記事の「手取りイメージ」が崩れる点にも注意してください。相場は出発点、手取りは着地点です。金額の目安がつかめたら、本ツールで額面・勤続年数・退職理由を入れ、税額と手取りを確認しましょう。
家族に説明するときの伝え方
相場の話は、平均額だけを伝えると誤解が起きます。「大卒の定年で2,000万円」という見出しは、大企業・長期勤続のイメージが混ざっていることが多いからです。家族会議では、勤務先の規程で見込まれる額面の幅、控除を引いたあとの税、iDeCoや企業年金を同じ年に足すかどうか、の3点を紙に書いて共有してください。
幅を持たせるときは、低い方の額で生活設計を立て、高い方は予備費にします。住宅の購入や独立の時期を、高い方の相場に合わせると、実際の支給が下振れたときに計画が壊れます。本ツールのPDFを保存して、額面と手取りの両方を残しておくと、後からの見返しが楽です。
まとめ
退職金の相場は勤続年数・企業規模・退職理由で大きく変わります。平均額を自分の金額だと思い込まず、規程と企業年金の残高を確認したうえで、額面ではなく手取りで判断することが大切です。額が分からない場合は概算でもよいので、控除を超えるかどうかを先に把握しましょう。