受給時期

年金繰上げ・繰下げの損益分岐|0.4%と0.7%の計算

2026/10/15

「65歳まで待てば満額」「早くもらった方が得」——どちらも半分正しく半分間違いです。繰上げ・繰下げは、月額の増減と生涯の受取総額がトレードオフになります。

増減率のルール(老齢年金)

- 繰上げ(65歳より前):1か月早いごとに0.4%減(60歳開始なら60か月→最大24%減) - 繰下げ(65歳より後):1か月遅いごとに0.7%増(70歳開始なら60か月→最大42%増)

例:65歳時点の満額が月15万円(年180万円)の人 - 60歳開始→ 15万×76%=月11.4万円 - 70歳開始→ 15万×142%=月21.3万円

損益分岐:いつから「繰下げ」が得か

同じく月15万円(65歳開始)を例に、累計受給額で比較します(簡易)。

- 65歳開始:78歳までに累計約2,340万円 - 70歳開始(月21.3万):75歳時点で累計が65歳開始を上回るケースが多い(損益分岐おおむね75〜77歳前後は個人差)

長生きリスクを家族歴で見込むなら繰下げ、早期にキャッシュが必要なら繰上げ——年金受給額シミュレーターで試算するグラフで累計曲線を確認してください。

繰下げで「月7万増」に見える落とし穴

繰下げは月額が大きく見えますが、70歳まで無収入の5年間は貯金取り崩しが必要です。貯金500万円を5年で使うと、月あたり8.3万円相当の生活費を自己負担していたことになります。繰下げ中に医療費の自己負担(高齢者医療制度の切替タイミング)も家計に効きます。

繰上げの典型失敗例

- 減額24%を知らず60歳開始し、月3.6万円の永久減額に後悔 - 再就労で在職老齢年金の支給停止に気づかず、返還請求 - 配偶者の加給年金タイミングとずらし、世帯合計が想定より少ない

決め方の5ステップ

1. ねんきん定期便の65歳時点月額を確認 2. 60・65・70・75歳で年金受給額シミュレーターで試算する 3. 貯金残高÷無収入年数で「繰下げ可能年数」を計算 4. 夫婦の年金合算で世帯月額を確認 5. 年金事務所で受給開始希望年月を予約相談(混雑期は2〜3か月待ちも)

繰下げ中の医療費・自己負担割合の変化

65歳未満は原則被用者保険、75歳から後期高齢者医療と制度が切り替わり、自己負担割合(1割・2割・3割)や高額療養費の計算も変わります。70歳開始で月21万円でも、66歳で大きな入院があった年は一時的に家計が10万円以上赤字——繰下げの「高月額」だけでは吸収できません。繰上げ60歳開始で減額24%を受け入れても、60〜64歳の就労収入+年金で医療費を賄える場合は合理的、という判断もあります。健康リスクは数字だけでは決められないため、繰下げ期間の医療予備費を月1万円積み立てるルールを家計に足すと安全側です。

75歳まで繰下げした場合のイメージ

65歳満額月15万円の人が75歳まで繰下げ(120か月×0.7%=84%増)すると、開始時月額は27.6万円近い額面になります。ただし75歳までの10年間は年金ゼロ(他所得なしなら)で、240万円/年×10年=2,400万円相当を貯金から捻出する必要があります。貯金3,000万円あれば可能、500万円なら繰下げは自殺的——というざっくり判断が先に必要です。繰下げは「長生き保険」であり流動性の売却でもあります。

70歳繰下げで「月7万増」の手取り感覚

額面15万→21.3万(42%増)でも、税金・保険料後の手取り増は月4〜5万程度にとどまることが多いです(手取りで見る年金参照)。「月7万増」のうち2万は国・自治体・保険者への支払い——繰下げの魅力を評価するときは額面と手取りの両方を年金受給額シミュレーターで試算するグラフと並べてください。

まとめ

受給開始年齢は一度決めると原則取り消せないため、60歳誕生日直前の衝動決断が最大のリスクです。数値とキャッシュフローを紙1枚に書き、48時間寝かせてから請求書にサインする——この一手間だけで後悔率は下がります。

繰上げ繰下げに正解はなく、寿命・就労・貯金・配偶者の4点セットで決めます。数値は年金受給額シミュレーターで試算するのが最短です。60歳開始の詳細は60歳から年金をもらう?も参照してください。

あなたの受給見込みを無料試算

年金シミュレーターを開く

関連コラム