相続税の申告期限は10ヶ月!手続きの流れと税理士に依頼するタイミング
相続税の申告と納税の期限は、相続の開始を知った日の翌日から10か月以内です。死亡の日からちょうど10か月、ではありません。知った日が死亡日と同じなら、死亡日の10か月後の応当日が期限になるのが通常です。その応当日が土曜日、日曜日、国民の祝日などに当たるときは、原則としてその翌日が期限になります。
この10か月に、財産の評価、分割の合意、申告書の作成、納税資金の準備が入ります。基礎控除以下なら申告自体が不要ですが、配偶者の税額軽減や小規模宅地等の特例で初めて0円になる場合は、0円でも申告が必要です。
目次
期限の数え方
例:死亡をその日に知ったのが2026年1月15日(木)。
- 起算は翌16日から
- 10か月後の応当日は2026年11月15日(日)
- 日曜日のため、申告・納税の期限は原則としてその翌日の 2026年11月16日(月)
国税通則法では、申告や納税の期限が土曜日、日曜日、国民の祝日、年末年始(12月29日から1月3日)に当たるとき、その翌日が期限になります。翌日も休日なら、さらに次の平日まで繰り下がります。
準確定申告(亡くなった人の所得税)は別で、相続の開始を知った日の翌日から4か月以内です。上の例では2026年5月15日(金)です。金曜なので、この日自体は繰り下がりません。相続税より先に来ます。この期限も土日祝に当たれば、原則として翌日になります。
公的年金等の収入金額が400万円以下で、かつ、公的年金等の全部が源泉徴収の対象となっており、公的年金等に係る雑所得以外の所得金額が20万円以下なら、所得税の確定申告は不要な場合があります。ただし、所得税の還付を受けるために確定申告が必要な場合や、住民税の申告が必要な場合もあります。準確定申告で医療費控除の対象になるのは、原則として亡くなった人が死亡日までに支払った医療費です。死亡後に相続人が支払った医療費は、準確定申告では控除できません。ただし、亡くなった人と相続人が医療費の支出事由が生じた時点などで生計を一にしていた場合には、実際に支払った相続人自身の医療費控除の対象になることがあります。準確定申告を提出すると、ワンストップ特例の申請は無効になります。そのため、ワンストップ特例の申請を済ませていた寄附分も含め、控除を受けるふるさと納税の寄附金はすべて申告書に記載してください。
相続放棄はさらに短く、自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内です。2026年1月15日に、自己のために相続の開始があったことを知った場合、満了日の目安は2026年4月15日(水)です。家庭裁判所の休日に当たる場合は、原則として次の開庁日までです。放棄するかどうかは、債務の有無を見てから相続税の計算に入ってください。3か月では調査が終わらないときは、期間が満了する前に家庭裁判所へ熟慮期間の伸長を申し立てられます。放棄しても、基礎控除の人数からは除外されません。
10か月のあいだにやること
目安の順番は次のとおりです。
- 死亡届、遺言の有無、口座の凍結状況を確認する(初月)。死亡届は、死亡の事実を知った日から原則7日以内です(国外で死亡したことを知ったときは3か月以内)
- 相続人を確定する。戸籍を出生までさかのぼる(1〜2か月目)
- 預貯金、証券、不動産、保険、借入を一覧にする(2〜4か月目)
- 土地は路線価方式または倍率方式で評価します。建物は原則として固定資産税評価額を基礎に評価しますが、貸家の場合は借家権割合や賃貸割合に応じて評価額を減額するなど、利用状況による調整があります(3〜6か月目)
- 誰が何を取得するかを決め、遺産分割協議書にする(6〜8か月目)
- 申告書を作り、納税する(8〜10か月目)
4と5は並行します。土地の評価は、路線価地域なら路線価に地積を掛け、倍率地域なら固定資産税評価額に国税庁が定める倍率を掛けます。奥行、不整形、接道の状況で補正が入るため、地図上で正方形に見えても私道の持分やがけ地があると評価は変わります。
小規模宅地等の特例も配偶者の税額軽減も、取得者が決まらない未分割の財産には原則として適用できません。協議が申告期限に間に合わないときは、申告期限までに「申告期限後3年以内の分割見込書」を申告書に添付します。その後、申告期限から3年以内に分割が成立し、分割のあったことを知った日(通常は遺産分割協議が成立した日)の翌日から4か月以内に更正の請求をすれば、配偶者の税額軽減や小規模宅地等の特例の適用を受けられる余地が残ります。見込書を出さないまま期限を過ぎると、あとから分割してもこれらの特例は原則として使えません。
納付は、原則として金銭による一括です。金銭で一時に納めることが困難なときは延納、延納によっても金銭で納めることが困難なときは物納の制度があります。延納は誰でも自由に使える制度ではなく、相続税額が10万円を超えること、金銭で一時に納付することが困難であること、原則として担保を提供することが必要です。ただし、延納税額が100万円以下で、かつ、延納期間が3年以下の場合は、担保を提供する必要はありません。いずれも申告期限までに申請し、税務署長の許可を受ける必要があります。希望すれば必ず認められる制度ではありません。分割協議の終盤で「売れば払える」となっても、売却は10か月に収まらないことがあります。資金の目処は6か月目までに付けてください。不動産中心の家の現金対策は不動産が多いときの考え方に書きました。
自分で足りるケースと税理士が必要なケース
自分で申告しやすいのは、次のすべてに当てはまる場合です。
- 相続人が配偶者と子だけで、争っていない
- 財産が預貯金と上場株式と、自分で住む自宅だけ
- 土地が路線価地域で、奥行・接道・私道の補正がほとんどない
- 加算対象期間の暦年贈与も、相続時精算課税の適用もない
- 基礎控除以下で申告が不要か、申告しても税額が数十万円で検算できる
正味の遺産が基礎控除以下なら、申告自体が不要です。配偶者の税額軽減や小規模宅地等の特例を適用してはじめて税額が0円になる場合は、原則として申告が必要です。この二つは別です。
加算対象期間は、相続の開始日で違います。2026年12月31日までの相続は、原則として相続開始前3年以内の暦年贈与です。2027年1月1日から2030年12月31日までの相続では、2024年1月1日以後の贈与が加算対象です。2031年1月1日以後の相続では、相続開始前7年以内の暦年贈与が加算対象になります。3年を超えて延長された期間の贈与は、延長期間全体で合計100万円を限度に加算額から控除します。相続時精算課税を選んでいる相手からの贈与は、この持戻しとは別です。令和6年1月1日以後の年110万円の基礎控除の部分は相続財産に加算しません。それを超える部分は、相続のときに加算します。
税理士に依頼するかどうかは、次のような事情があるときの実務上の目安です。法律上、必ず依頼しなければならない境界ではありません。
- 土地が複数、貸家、私道、がけ地があり、路線価方式・倍率方式や形状・接道の補正が必要
- 非上場株式や個人事業がある
- 相続人のなかに兄弟姉妹や甥姪がいて、2割加算の確認が必要
- 相続時精算課税を選択している、または加算対象期間内の暦年贈与がある
- 配偶者の税額軽減と二次相続のどちらを優先するかで意見が割れている
- 税額の見込みが100万円を超え、評価の誤りが納税額に直結する
費用の相場は遺産の内容で幅がありますが、基本報酬に土地の評価件数を加算する形が多いです。税額を減らす特例の適用漏れの方が、報酬より高くつくことがあります。
依頼が遅れて起きること
死亡から8か月目に依頼すると、戸籍の収集と評価だけで期限に届かないことがあります。納税が必要なのに無申告のまま期限を過ぎると、無申告加算税や延滞税が課されることがあります。税務署からの調査の事前通知を受ける前に自主的に期限後申告をした場合、無申告加算税は原則として軽減されます。また、法定申告期限から1か月以内に自主的に申告し、一定の要件を満たす場合には、無申告加算税が課されないこともあります。ただし、納付が遅れた場合には、別途延滞税がかかることがあります。
配偶者の税額軽減や小規模宅地等の特例は、原則として申告書への適用内容の記載と必要書類の添付が必要です。期限後申告であっても、申告期限までに遺産分割が成立しており、各特例の要件を満たしていれば適用できる場合があります。一方、申告期限時点で未分割だった財産について、後から特例を適用するには、原則として申告期限までに「申告期限後3年以内の分割見込書」を添付して申告し、その後の分割成立や更正の請求など所定の手続きを行う必要があります。0円にできる特例を期限切れで失うのが、もっとも高い失敗です。
依頼のタイミングは、四十九日が終わったころ、遅くとも相続の開始を知った日から3か月以内が実務上の目安です。相続放棄の3か月と重なるので、債務超過の可能性があるときは、放棄や熟慮期間の伸長を先に弁護士または司法書士へ相談してください。
税理士に渡す資料
初回に揃っていると、見積もりと期限の判断が早くなります。
- 遺言書の写し、またはないことの確認
- 相続人のリストと、分かりうる戸籍
- 直近の固定資産税の課税明細書
- 預貯金の残高証明書か、死亡日の通帳
- 保険証券と、受取人・契約者のメモ
- 借入の返済予定表
- 加算対象期間の贈与契約と贈与税申告書(2026年12月31日までの相続なら原則3年。相続時精算課税の届出と申告書も含む)
- 配偶者名義の主な財産(二次相続の概算に使う)
二次相続の試算に配偶者の財産が必要な理由は、二次相続で税金が跳ね上がるケースのとおりです。一次の申告だけを見て分割を決めると、家族全体の税額は下がりません。
まとめ
申告と納税の期限は、相続の開始を知った日の翌日から10か月以内です。2026年1月15日に知った場合、応当日の11月15日は日曜なので、期限は原則として2026年11月16日です。それより前に、準確定申告の4か月と相続放棄の3か月が来ます。土地の補正、事業、加算対象期間の贈与、二次相続の比較があるなら、3か月以内に税理士へ相談するのが実務上の目安です。債務超過の可能性があるときは、弁護士または司法書士へ先に相談してください。
割合の当たりを付けてから相談に臨むなら、相続税概算シミュレーターで一次・二次相続のトータル税額を計算するの結果を印刷して持参すると、論点が絞れます。基礎控除以下かどうかの最初の判定は基礎控除の解説で確認できます。
よくある質問
Q.申告期限に間に合わない場合はどうなりますか?
納税が必要なのに無申告のまま期限を過ぎると、無申告加算税や延滞税が課されることがあります。税務署の事前通知の前に自主的に期限後申告をすれば、無申告加算税は原則として軽減され、法定申告期限から1か月以内で一定の要件を満たす場合は課されないこともあります。納付が遅れると延滞税がかかることがあります。配偶者の税額軽減や小規模宅地等の特例は、期限後申告でも、申告期限までに遺産分割が成立し要件を満たせば適用できる場合があります。申告期限時点で未分割だった財産は、見込書の添付など所定の手続きが必要です。
Q.期限は、死亡の日から10か月ですか?
相続の開始を知った日の翌日から10か月です。2026年1月15日に知ったなら、10か月後の応当日は2026年11月15日ですが、日曜日に当たるため、申告・納税の期限は原則として翌日の2026年11月16日です。それより前に、相続放棄は3か月、準確定申告は4か月です。
Q.どのタイミングで税理士に依頼すればよいですか?
土地が複数ある、非上場株式がある、加算対象期間内の暦年贈与がある、二次相続との比較が必要なときは、四十九日のあと、遅くとも相続の開始を知った日から3か月以内が目安です。8か月目では、戸籍と評価だけで期限に届かないことがあります。
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